運命の恋~もしもあの時・・~
そうやって新しい生活の準備が着々と整ってきた。
もう元の家には殆ど物が無くなってしまうと本当にガランと広かった。
私は昼間に長年の感謝を込めて掃除をしに行っていた。もちろん1日、2日じゃ終わらず苦戦した。

そして、掃除が終わり11月の初めの日曜日に旦那と2人で不動産の立ち会いを行い、鍵を返却した。
その日は娘を有希の家に預かってもらっていたので、立ち会い後2人でランチを食べ、離婚届を区役所に提出した。
私は両親共に他界しており、交流している親戚も殆どいないので特に報告はせず、何かのついでに報告しようと思っている。
彼の両親には彼から伝えてもらうことになっている。
姓は菊池のままで良いと知り、娘の名前が変わるのは…と思い菊池姓のままでいることにした。

「これまで本当にありがとう。お世話になりました。」

言い終わらないうちに涙が出てしまった…
彼の目にも涙が溜まっている。

「香織、最後に抱きしめてもいい?」

「うん。」

区役所の駐車場なのに、私を抱きしめしばらくそのまま動かなかった。

「こちらこそ本当にありがとう。そして本当にごめんね。」

私は返事が出来ず泣きながら頭を横に振った。
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