運命の恋~もしもあの時・・~
「泣かないで。ねっ?」

「うっうぅ、はい…」

私は頷いて返事はするものの涙が止まらなかった。
そんな私を笑いながらも頭を撫でてくれた。

「夏川は離婚のこと知ってたんだね。」

私は慌てて頭を横に振った。

「指輪してないって気づかれたんです。それで昼間に話ました…本当は言うつもりなかったのに…」

稗田さんは優しく両手で私の顔を包み込んだ。

「そっか、田邉も知ってるの?」

私はまた頭を横に振った。

「そう、田邉には内緒がいいかもね。どんな風に突っ走るかわからないから。俺には?俺にも内緒にしておくつもりだった?」

頷きづらかったけど、ゆっくり頷いた。

「はぁ、香織ちゃんひどいなぁ。でも教えてくれたし、好きっても言ってくれた。聞かなかったことになんかしないからね。もう逃がすつもりもないよ。」

少し怒ってるのかな?真剣な顔でそう言われ、また抱きしめられた。
私の心は追いついていかなくてドキドキしっぱなしだった。
憧れの存在、キラキラした思い出、決して手に入れることの出来ない人だと思ってた。
< 229 / 316 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop