運命の恋~もしもあの時・・~
慌てて手を押しのけ顔を上げる。
こちらを真剣な目で見つめてるから…

「やめてよ!私は田邉さんが14年間見てきた香織ではないのよ。あちらの香織さんに申し訳ないわ。」

精一杯、冗談っぽく返した。
カップに残ったコーヒーをいっきに飲み干した。
チラッと田邉さんを見てみると俯きぎみに何か考えているように見えた。

「そうだ、あの日…先に香織が言ったんだ。もし俺が香織と結婚してなければ俺にも子どもがいて幸せだったんじゃないかって…それで、売り言葉に買い言葉であんなこと言ったんだ。」

田邉さんの顔色がみるみる悪くなっていった。
店内は確かに暖かかったけど汗かくほどではないのに田邉さんのこめかみ辺りからツーっと汗が流れる。

「ねぇ、大丈夫?顔色が悪いけど…?」

「悪い、あの日の事を思い出そうと…そうだ、いつも…思い出そうとすると頭が痛くなるんだ。でも今はいきなり思い出して…頭が痛くなってきた。」
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