運命の恋～もしもあの時・・～

「どうしても自分が結婚していたと言い張るんですよ。自分は田邉と同じ職場の先輩後輩の仲で、稗田と申します。」

そういうと稗田さんは座り込んでいる私を起こしてくれ、丁寧に名刺を差し出した。

日本人の習性なのか、自己紹介をされたらついこちらも自己紹介をしてしまう…

「私は菊池香織と申します。」

会釈をしつつ名刺を受け取る。

「菊池？宮下でも田邉でもなく？」

田邉と紹介された男はかなりショックを受けている様子で私を凝視していた。

演技には見えないその男の様子をみて何故だか私も悲しくなった…

なんなんだろう？

「驚かれたでしょう。こんなクマみたいな男から急に腕を掴まれて。とりあえず私が責任を持って田邉を連れて帰ります。しっかり言って聞かせますので今日のことは穏便に済ませていただけませんでしょうか？」