運命の恋~もしもあの時・・~
穏便に…

稗田さんは何も言わずに立ちすくんでいる私に免許証を見せてくれた。
きっと身分証明のつもりなのだろう。

稗田健二 住所は隣の区で、年はひとつ上らしい。
「ちょっと失礼」と、私の手からさっき受け取った名刺を取り、何やら書いている。

「私の携帯番号も書いておきましたのでもし何かありましたらご連絡下さい。本当に田邉が申し訳ありませんでした。」

深々と頭をさげられ、つい、私も頭を下げる。

そんなやりとりをしている最中も田邉さんは絶望的な表情で私を見ていた。

「ママ~!」

声がして振り向くと先に帰っていた娘がこちらに向かって走ってきている。
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