目覚めたら契約花嫁

レアード家当主

コンコン。


「どうぞ。」


返事をすれば、ダヴィが入ってきた。


「リン様、お茶はいかがですか?」

「ありがとう、ダヴィ。それとリンでいいから。」

「とんでもありません。ロイ様の婚約者様を呼び捨てなど。」

「婚約者……ね……。」


テーブルに紅茶を淹れてくれるダヴィはロイの執事。

ロイの家は……。


「このレアード家当主であるロイ様の花嫁になられる方を呼び捨てになど出来ません。」


結局、私はロイに逆らえなかったのだ。

知らない国、誰も頼る人などいない。

一人で外に放り投げられたら、私は途方にくれてしまう。

そんなのは分かりきっていてロイは提案してきたのだ。

契約の花嫁として。
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