目覚めたら契約花嫁
ベッドに踞る私の隣に人の気配がして、思わず動きを止めた。


「大丈夫か?」


優しい声色に視線だけを向ける。

心配そうに私を覗き込む彼を見つめる。


「君は誰なんだ?」


再び掛けられた優しい声色に心を落ち着かせる。

大きく深呼吸をする。


「私は凛(りん)。貴方は誰?」

「ロイ。ロイ・レアードだ。」


やっぱり日本人ではない。

彼から視線を外して、もう一度辺りを見渡してみる。

日本じゃない気がしてきた。

彼の足下を見れば靴を履いている。


「ここは?」

「私の家だ。記憶がないのか?」


彼がベッドから離れていき、近くの椅子へと腰掛けた。

記憶?

いや、記憶はある。

私は仕事帰りに信号を渡っていて………。

そこまで思い出して目をギュッと閉じた。
< 3 / 146 >

この作品をシェア

pagetop