桜の花が散る頃に
STORY:ZERO「友達100人できるかな」

俺と夏実

[俺と夏実]start



ハロー宇宙。元気ですか?

こちらは梅雨入りしそうで、俺は萎え萎えです。

グラウンドが使えなくなると、俺のつまんない日常は更につまんなくなります。

「えー、金正恩さんはだな!こう仰って…」

何がつまんないって?
だって、この授業、“日本史”だぜ?

日本の歴史を学ぶ授業で、北朝鮮の話しかしない北朝鮮信者の教師ってヤバくない?
あだ名が北朝鮮なくらいだもん、ヤバイよ。

そんなに北朝鮮が好きなら、北朝鮮に行っちゃえばいいのに。

ハロー宇宙、そう思いませんか?

俺はこんなくだらない授業の合間にも雨が降って来ないかと心配です。

あーあ、せめて太陽出ないかなー…

その時、つまんない授業をぶった斬るような勢いで、入口のドアが開いた。

「セーーフ!ここ、二年A組で合ってるよね?」

唐突な出来事に、クラス全員の眠気が吹き飛ぶ。

男みたいに短い栗色の髪に綺麗な顔立ち。

みんなが驚いたのは、知らない女の子がいきなり入ってきたとか、そういう事じゃなくて、

「アウトだ!!!んでお前は誰だ!!」

流石に今回は北朝鮮に同調。
どー考えてもセーフじゃない状況だろ。

「え?アウトなの?いやー、時間割じゃ日本史になってたのに黒板に北朝鮮の事しか書いてないから、てっきり休み時間に勉強してるのかと思いました!」

うっわ、言ったよこの子。
ここ来るまでに何個か教室通るから、授業中な事くらい分かるだろうに、絶対わざとじゃん。

クラスも騒然だよ。
転校生かな?とか、
北朝鮮に喧嘩売った!とか、
コソコソと大盛り上がり。や、小盛り上がり?

「あ、今年度から編入してきた藍泉夏実です!好きな食べ物はちくわの磯辺揚げ、好きな言葉は“成るように成る”です!んで先生、私の席はどこでしょーか?」

ニコニコと聞く藍泉さんに、北朝鮮はご立腹。
敬愛する北朝鮮の話を遮られたもんねー…

「廊下だ!!!立ってなさい!!」

昭和かよ。

みんなの心の声が揃ったのが聞こえた気がした。

藍泉さんは、落ち込むでも驚くでもなく、

「ハーイ。」

と笑って教室を出て行った。

なんだ、あの子。
藍泉ってなんか聞いた事あると思ったら、四月から二ヶ月以上もずっと来てない編入生の名前。

てっきり引きこもりとかそういう類かと思ってたけど、そういうイメージとは真逆な人種。

とりあえずなんか、

「おもしれー…」

あっ、言葉に出てしまった。

「…塩谷!!お前も廊下に立ってろ!!」


ハロー宇宙。元気ですか?

俺は何か楽しいことが起こりそうな予感がしてます。

だって北朝鮮の話を聞くより、藍泉さんと廊下に立ってた方が百万倍楽しそう。

そう思いませんか?宇宙。
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