桜の花が散る頃に
そして現在、虎丸の家。
バイトに行った虎丸の代わりに、結城と俺 学が虎丸の婆さんの面倒を見てる。
今日は虎丸がバイトになった事も俺達がここにきた事も急遽な事だが、上手くハマってよかった。
面倒を見るって言ってもそんなにやる事は無くて、昼間のヘルパーさんが来ている間にお風呂や食事の準備なんかは終わってしまっている。
「悪いねえ、何も出せやせんくて…。」
「いえいえ!押し掛けたのは私達の方ですから、気にしないで休んでてくださいー!」
相変わらず、結城と婆さんは打ち解けている様子。
虎丸の婆さんが眠りに入った頃、学はノートにペンを走らせていた。
こんな時こんな場所でも勉強かよ、と思ったら、学がまとめていたのは今日の出来事についてだった。
ペンを置いた学は、ノートを俺達二人に見えるように広げた後、話しだした。
「まずは人物だ。最初にインターフォンに出た女性、夏実は“ヨウコさん”と呼んでいた。彼女も夏実“様”と呼んでいたから、主従関係と取れる。あの大きな家なら家政婦の一人二人いてもおかしくはないだろう。」
学の長所、ようやく発揮…?
ミステリーなんかも好きだって言ってたが、考察めいた事までするとは。
とりあえず続きを聞くことにした。
「そして、“千夏”と連呼していたあの女の人だ。夏実は彼女を“母さん”と呼んでいたから、多分夏実の母親だろう。」
「あ、微妙に似てたしな、顔とか髪色とか。」
「バカは余計な口を開くな。」
「あ!?」
「アンタ達静かにしてよッ!」
ごちゃごちゃ揉めながらも、話は進んでいく。
「そしてここからが本編、“千夏”の話だ。夏実の母親は、夏実を見て“千夏”と言った。そして夏実は“千夏”を演じていたように見えた。インターフォンの向こうでは確かに夏実の事を“夏実様”と呼んだヨウコさんが、あの母親の前では“千夏様”と言い換えた事も重要だろう。」
…俺、頭悪過ぎて、全く理解できない。
「結論、夏実は“千夏”という名の雪走高校の男子生徒を演じている、という事になる。そしてそれはあの母親のみが知り得ない事実という事だろう。」
夏実が、別人を演じる?
んー、全くわけがわからん。
「なんでその、“千夏”を演じなきゃなんねーの」
「そんな事は僕の知った事では無い。」
え、そんな中途半端に考察すんの…?
「ともかく。夏実はこの事をあまり知られたくなかったのだろう、来週全力で謝るぞ。土下座以上は覚悟しなければな。」
学はそう言って立ち上がり、外の空気を吸いに行った。
学が居なくなった隙に、結城がぽそりと呟いた。
「もし夏実が“夏実”じゃなくて“千夏”だとしたら、私達って夏実の何なんだろ…さっきも、私の友達じゃ無いって言ってたし…」
相当、不安なようだ。
俺は宥めるように言った。
「私の、なんて夏実は言ってない。“僕の”って言ったんだ。学の考察が正しいなら、“千夏”の友達では無いって意味だと思う。まー何にせよ謝らなきゃいけないとは思うけど…巻き込んでごめんな、結城。」
「んーん、私だけ仲間外れにしないでくれてありがと、秋人君。」
俺達はその後無言で、虎丸の帰りを確認し次第それぞれの家に帰宅した。
バイトに行った虎丸の代わりに、結城と俺 学が虎丸の婆さんの面倒を見てる。
今日は虎丸がバイトになった事も俺達がここにきた事も急遽な事だが、上手くハマってよかった。
面倒を見るって言ってもそんなにやる事は無くて、昼間のヘルパーさんが来ている間にお風呂や食事の準備なんかは終わってしまっている。
「悪いねえ、何も出せやせんくて…。」
「いえいえ!押し掛けたのは私達の方ですから、気にしないで休んでてくださいー!」
相変わらず、結城と婆さんは打ち解けている様子。
虎丸の婆さんが眠りに入った頃、学はノートにペンを走らせていた。
こんな時こんな場所でも勉強かよ、と思ったら、学がまとめていたのは今日の出来事についてだった。
ペンを置いた学は、ノートを俺達二人に見えるように広げた後、話しだした。
「まずは人物だ。最初にインターフォンに出た女性、夏実は“ヨウコさん”と呼んでいた。彼女も夏実“様”と呼んでいたから、主従関係と取れる。あの大きな家なら家政婦の一人二人いてもおかしくはないだろう。」
学の長所、ようやく発揮…?
ミステリーなんかも好きだって言ってたが、考察めいた事までするとは。
とりあえず続きを聞くことにした。
「そして、“千夏”と連呼していたあの女の人だ。夏実は彼女を“母さん”と呼んでいたから、多分夏実の母親だろう。」
「あ、微妙に似てたしな、顔とか髪色とか。」
「バカは余計な口を開くな。」
「あ!?」
「アンタ達静かにしてよッ!」
ごちゃごちゃ揉めながらも、話は進んでいく。
「そしてここからが本編、“千夏”の話だ。夏実の母親は、夏実を見て“千夏”と言った。そして夏実は“千夏”を演じていたように見えた。インターフォンの向こうでは確かに夏実の事を“夏実様”と呼んだヨウコさんが、あの母親の前では“千夏様”と言い換えた事も重要だろう。」
…俺、頭悪過ぎて、全く理解できない。
「結論、夏実は“千夏”という名の雪走高校の男子生徒を演じている、という事になる。そしてそれはあの母親のみが知り得ない事実という事だろう。」
夏実が、別人を演じる?
んー、全くわけがわからん。
「なんでその、“千夏”を演じなきゃなんねーの」
「そんな事は僕の知った事では無い。」
え、そんな中途半端に考察すんの…?
「ともかく。夏実はこの事をあまり知られたくなかったのだろう、来週全力で謝るぞ。土下座以上は覚悟しなければな。」
学はそう言って立ち上がり、外の空気を吸いに行った。
学が居なくなった隙に、結城がぽそりと呟いた。
「もし夏実が“夏実”じゃなくて“千夏”だとしたら、私達って夏実の何なんだろ…さっきも、私の友達じゃ無いって言ってたし…」
相当、不安なようだ。
俺は宥めるように言った。
「私の、なんて夏実は言ってない。“僕の”って言ったんだ。学の考察が正しいなら、“千夏”の友達では無いって意味だと思う。まー何にせよ謝らなきゃいけないとは思うけど…巻き込んでごめんな、結城。」
「んーん、私だけ仲間外れにしないでくれてありがと、秋人君。」
俺達はその後無言で、虎丸の帰りを確認し次第それぞれの家に帰宅した。