クールな弁護士の一途な熱情



……別に、私だって今更静に特別な感情なんてない。



だけど、どうしてか。

静に優しくされると、嬉しくて、甘えてしまう。

笑ってくれると胸の奥がキュッと掴まれる。

女性の影にモヤモヤして、こんなにも悔しい。



互いに、特別な関係なんてないはずなのに。



そんな思いを抱えながら、クラッカーにトマトやチーズを乗せたものをお皿に並べる。

それと、冷蔵庫にあった野菜とシーフードミックスを使ってマリネを作って……。



「お、美味そう」



すると突然背後から声をかけられ振り向く。

私の後ろに立つ静は早くもお風呂から出てきたようで、その姿は黒いスウェットのズボンに上半身裸だ。



は、半裸……!

突然目に飛び込んでくる、色白のほどよく筋肉がついた体。

普段スーツ越しに見るよりもがっしりとしていて、鍛えているのか腹筋も割れている。

意外といい体してる……じゃなくて!



「ちゃ、ちゃんと服着て!」

「だってあっついし」

「暑くない!ほら着る!」



本人からすればなんてことないのだろう。意味がわからなそうに髪をタオルで拭う彼に、私はその背中を押して脱衣所へ戻らせる。

私の態度に、静は渋々Tシャツを着て戻ってきた。



「もう、男の裸ひとつでそんなに騒がなくても」

「騒ぐでしょ。この変態」

「変態って!ひどい!」



そんなやりとりをしながら、リビングにあるテーブルにおつまみを並べる。

すると静は冷蔵庫からボトルを1本取り出し、食器棚から取り出したグラスふたつとともにテーブルに並べた。



ふたりでソファに座り、彼がグラスにボトルの中身を注ぐ。

コポコポという音とともに、炭酸を含んだワインがグラスの中で揺れた。


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