クールな弁護士の一途な熱情
「じゃあ、家の鍵を家に忘れた入江に乾杯」
「怒らせたいの?」
「うそうそ」
じろ、と見た私に、彼は冗談めかして笑う。
「入江の、新しい一歩に乾杯」
新しい、一歩。
それは、今日私が勇気を出して踏み出した一歩。
そう口にして微笑む彼に、私も思わず笑って、コンッとグラスを合わせた。
……ところが。
それから1時間も経たないうちに、静はぐったりとソファにもたれてしまっていた。
スパークリングワイン3杯目にして、静はすっかり酔っ払ってしまったらしい。
そんな彼を見て苦笑いで、私は自分のグラスをからにする。
弱いとは言ってたけど、本当に弱いんだ……。しかも眠くなっちゃうタイプ。
これじゃあ確かに、外では飲めないよね。
静も寝ちゃったし……毛布かけておいて、私は片付けて寝室行こうかな。
そう思い、静の寝顔をのぞく。
少し赤い頬と、伏せられたまつげ。
むにゃ、と気の抜けた声を漏らす彼につい「ふふ」と笑ってしまう。
子供みたいな寝顔。ちょっとかわいい。
指先でその頬をつんとつつく。その薄い頬に触れると静はくすぐったそうに顔をしかめてから、薄く目を開ける。
「あ、ごめんね。起こしちゃった?」
謝るけれど、酔っ払っている彼はボーッとした様子でこちらをちらりと見る。
そして頬に触れていた私の手を掴むと、腕を引っ張った。