クールな弁護士の一途な熱情
8.特別
『好きだよ、果穂』
あの言葉が、酔った勢いだなんてわかってる。
だけど、それでもやっぱり嬉しくて。
彼の声が、耳の奥から消えない。
『で?結局会社戻るんだ?』
静の家に泊まった日から4日ほどが経った、木曜日の夜。
私は自宅でお風呂上がりに髪を乾かしながら、スマートフォン片手に映美と電話をする。
「うん。部署は変わるけど、これまで通り企画の仕事をさせてもらうつもり」
『いやー、よかったよかった。欲を言えばあと5発は殴ってほしかったけど』
「あはは、5発って」
電話の向こうでけらけらと笑う映美に私も笑った。
あれから、何日も経たないうちに上原さんから連絡があり、異動先のブランドが決まった。
これまでのデパコスブランドとは違って、まだ立ち上げたての低価格の新規ブランド。
だけどそちらも『入江さんならぜひ』と快く受け入れてくれたそう。
ちょうどそのブランドでひとり寿退社することもあり、入れ替わりで9月頭から復帰することとなった。
静たちにもそのことは伝え、バイトは8月下旬まで、と取り決めた。
それを聞いた花村さんと壇さんもいやな顔ひとつせず、喜んでくれた。
『けどよかった、これまでと声も全然違うもんね』
「そうかな?」
『うん。この前より明るい声してる』
やっぱり、これまで声も沈んでいたのだろうか。
映美の声も安心したようだ。
思っていた以上に心配かけてしまっていたのかも。そう思うと、ちょっと申し訳ない。