クールな弁護士の一途な熱情
「伊勢崎は?」
「さぁ?今日1日外出だったから……そろそろくるんじゃないかな」
映美とそんな会話を交わすと、それから同級生たちとあれこれと会話をした。
「果穂今まで全然集まりにも来ないし、超寂しかったよ〜」
「ごめん、忙しくてなかなか」
「ってことは仕事ばっかりでまだ独身だなー?」
「あはは……ご名答」
指輪のひとつもついていない、まっさらな左手を見せて笑うと、室内もどっと笑いが起きた。
すると、それから少しして部屋の戸が開けられた。
「ごめん、遅くなった」
そこから顔をのぞかせたのは、スーツ姿の静だ。
仕事が終わり急いできたのだろう、彼は息苦しそうにネクタイを緩めながら座敷にあがる。
「伊勢崎お疲れ。相変わらず忙しそうだな、弁護士先生」
「おかげさまで」
男子とそう会話をかわしながら、静は私がいる席とは真逆の端の席へ座る。
そして静がひと息つこうとした、その時だった。
「伊勢崎くんなに飲む!?はいこれメニュー表!」
「あっサラダとるよ!他に食べたいものある!?」
「隣いいかな!?ちょっと男子邪魔!どいて!」
それまで和気あいあいとしたムードで話していた女子たちが、突如静のもとへ勢いよく押し寄せる。
彼女たちのその勢いに押され、静の周りに座っていた男子たちは押しのけられるように他の席へ移った。
「ねぇ映美、いつもあんな感じなの?」
「そうだねぇ。伊勢崎人気あるから」
以前企業に行った際もそうだったけど、どこでもあんな感じなんだ……。
言い寄る女性なんて沢山いる。
そんな彼が言った『好きだよ』なんて言葉を、本気にするほうがどうかしてる。