クールな弁護士の一途な熱情
「隣、いいか?」
ジョッキの中をぐいっと飲み干していると、声をかけられた。
顔を上げるとそこにいたのは、黒縁のメガネをかけた茶髪の彼。
その姿にすぐ名前が浮かんでくる。
「森くん!久しぶり」
「あ、ちゃんと覚えてたな」
「もちろん。一番バスケした仲じゃん」
私の隣に腰を下ろしながら笑うのは、高校時代、私が静と同じくらい仲が良かった男子・森雄大くん。
一見クールでとっつきづらい感じだけれど、実は負けず嫌いで、彼とは休み時間のたびに試合をした。
「果穂、今回は都合ついたんだな。今日は仕事は?」
「あ、あー、今夏休み中でさ。こっち帰ってきてたから」
今の複雑な事情を久しぶりにあった友達にできるわけもなく、誤魔化す。
「森くんは?なんの仕事してるの?」
「自営業。実家継いだんだ」
実家……たしか食堂だったっけ。
高校時代は『あんな古い店継がない』って言ってたのに。大人になって考えが変わったのかな。
「果穂、次なに飲む?」
「あ、じゃあ同じの」
森くんは店員にビールを二杯頼み、ちらりと静のほうを見た。
「それにしても、伊勢崎はいつもすごいな。さすが弁護士」
「あはは、本当だよね」
「さっさと彼女作るなり結婚するなりすれば、周りも落ち着くのにな」
感心するような、呆れたような口調で言う彼に笑って頷いた。