クールな弁護士の一途な熱情
「毎年ネクタイとかペンとかあげてるけど、段々ネタ切れになってくるわよね」
「果穂ちゃん、伊勢崎先生の好きなもの知らない?」
「好きなもの……いや、まったく」
花村さんにたずねられ考えてみるけれど、静の好きなものなどわかるはずもない。
頼りにならない私の返事に、ふたりはますます悩ましげな顔になってしまった。
でも、そっか。静の誕生日。
私もなにかあげようかな。再会してからというもの、お世話になりっぱなしだし。
私もプレゼントの見当なんてつかないけれど、今日の帰りに探しに行ってみよう。
18時すぎにあがった私はその足で横浜駅前の周辺のお店を見て回る。
ところが、百貨店やショッピングモール、路面店、どこを見てもこれといったものを見つけられずにいた。
うーん、これって感じものがないなぁ。
アクセサリーしてるイメージはないし、ピアスはもうしてないみたいだし。
ネクタイは花村さんたちから過去にももらってるだろうし、服は好みがわからないし。
そもそも、静がどんな色や柄を好むのか、趣味や好きなものなど、なにひとつわからない。
私、思った以上に静のこと知らなかったんだなぁ。
……いや、付き合ってた時も同じことを思っていた気がする。
好みがわからなくてプレゼントを決められず、結局手作りお菓子なら外さないだろうとガトーショコラを作ったんだよね。
甘いものはあんまり得意じゃないって言うから、ビターチョコで甘さ控えめにしてみたんだ。
あの頃のことを思い出すと、喜んでくれた静の笑顔が浮かんだ。
おいしい、って綺麗に全部食べてくれたんだよね。嬉しかったな。
だけどさすがにこの歳で手作りお菓子はないよね……。