クールな弁護士の一途な熱情
「ないない。付き合ってたっていっても12年前のことだし、これまで全く会ってなかったし、そんな今更」
「へぇ。それにしては親しげに見えたけど」
「それは、その……」
久しぶりに会っただけ、の関係には到底見えなかったのだろう。
森くんは疑わしそうな目でこちらを見た。
その視線から感じる無言の圧力に、思わず目が泳ぐ。
あぁ、これじゃあなにもないとは言い通せない。けどこのまま、やっぱり付き合ってるんだと噂を流されてしまっても困る。
そんな思いから、観念して私はこれまでのことを簡単に話した。
職場でいろいろとあり現在休職中であること。
そこで再会した静の紹介で、彼の事務所で事務仕事を手伝っているということ。
「じゃあ今、伊勢崎のところで仕事手伝ってるのか」
「うん。でも本当それだけだし、来月には職場に戻るし」
その説明で森くんはようやく納得したようで、そうだったのかと頷いた。
「けど少しでも付き合った仲だろ?復縁とかありえるんじゃないのか」
「ないない。お互いそういう気持ちないし、静もあれだけモテるのに私なんて選ばないよ」
自虐っぽく言って、あはは、と笑う。
そんな私に彼は、少し黙ってからたずねた。
「……ずっと疑問だったんだけどさ、なんでお前ら別れたんだ?」
「え?」
「付き合うまでも仲よかったし、付き合ってる時もなんとなく上手くいってそうな感じだったけど」