クールな弁護士の一途な熱情
「入江!」
その瞬間、突然大きな声とともに腕を引かれた。
驚き振り向くと、それは静だった。
彼は私の腕を掴んだまま、苦しそうに息をあげる。
「静?どうしてここに?」
「ちょうど通り走ってたら、入江が歩いてるの見えて……車停めて、追いかけてきた」
この沢山の人が行き交う夜の街で、私の姿を見つけて、捕まえてくれたの?
そんなに息を切らせて、必死に。
また明日、事務所でいくらでも会えるのに。
そんな彼が愛しくて、ついクスクスと笑った。
「また明日会えるのに。必死すぎ」
「あ、確かに!」
よほど衝動的に動いたのだろう。言われて気づいた様子の彼が、いっそうおかしい。
笑い続ける私に、静は少し恥ずかしそうに頭をかいた。
「ところで、なにしてたの?もうとっくに仕事はあがったでしょ」
「ちょっと買い物してたの。誕生日プレゼント探しに……はっ」
言ってから、はっとして口を塞ぐ。
わ、私のバカ!
静本人に誕生日プレゼントの話してどうするの!しかも結局なにも買えていないのに。
誰の、なんて言わなくとも当然本人には通じたのだろう。静は少し黙ってから、ふっと笑う。
「それ、誰の誕生日か聞いてもいい?」
意地悪く聞く彼に、ここで嘘をついても無駄だということくらいわかっている。
ゆっくりと静を指差すと、彼は嬉しそうに、まるで子供のような笑顔で笑った。
その笑顔に、胸がキュンとときめく。