クールな弁護士の一途な熱情
「で、でもまだなにも買えてないの!なにがいいかもわからなくて……」
「じゃあ、リクエストしてもいい?」
「え?うん、私が買えるようなものなら」
静自身がほしいものがあるのなら、それはそれで好都合だ。
ただし、ものすごく高いものじゃありませんように、と心の中で願うと、静は顔を近づけて口を開く。
「入江」
「えっ……」
わ、私……!?
「が、作ったチョコケーキ」
……チョコ、ケーキ?
一瞬ドキッとさせられてしまったけれど、続けられた言葉にそのときめきも消えた。
ここでまさかチョコケーキが出てくるとは思わず、キョトンとしてしまう。
「へ?ケーキ?」
「高校の頃、作ってくれたじゃん。あれよりうまいケーキと今だに出会えないんだよね」
高校の頃に作ったチョコケーキって、あのガトーショコラだ。よく覚えていたなぁ。
「わかった、じゃあ明日作って……」
明日作って持って行くから、そう言いかけた言葉を遮るように、静は私の腕を掴む。
「じゃあ、今からうち行こ」
「え?」
「せっかくなら作りたて食べたいじゃん。ね」
そう言った静は有無を言わさぬ笑顔だ。
いや、別に明日でもいいでしょ……とも思うけれど、誕生日の人の意見を尊重するべきかもとも思う。
答えるより先に歩き出してしまう静に、私は流されるようについていった。
仕方ない……作ってあげるか。
普段ガトーショコラなんて作らないから作り方もうろ覚えだけど。
それからスーパーに寄って材料を買い、私たちは静のマンションへやってきた。
そしてキッチンに立つと、早速料理にとりかかる。