クールな弁護士の一途な熱情



「なにか手伝うことある?」

「誕生日プレゼントなのに手伝わせちゃダメでしょ。静はゆっくりしてて」



その背中を押してキッチンから追い出すと、静は「はーい」と返事をして、リビングに行きパソコンをひらく。

一瞬で真剣な顔つきになるところから、おそらく持ち帰った仕事をしているのだろう。

邪魔しないように、なるべく静かに作ろう。



そう決めて、スマートフォンでガトーショコラの作り方を検索しながらとりかかった。



でも静、私からの誕生日プレゼントを覚えていてくれたんだ。

静はどんな些細なことも、ひとつひとつ覚えてくれているなぁ。



この12年、その胸にほんの少しでも自分の面影が残っていたのかも。

そう思うと嬉しくて、胸の奥がくすぐったい。





それから1時間ほどで、ガトーショコラは出来上がった。



「うん、いい香り」



焼き加減も絶妙で、表面はサクサク、中はふんわりとして久しぶりにしてはうまく作れたかも。

出来上がったガトーショコラを一切れお皿に乗せて、リビングにいる静のもとへ運ぶ。



「お待たせ」

「わ、美味しそう」



テーブルの上にお皿を静はパソコンを閉じ、さっそくフォークを手にひと口食べた。



見た目はいいけど、味は大丈夫かな。

なるべくあの頃と同じになるように甘くなりすぎないように作ったんだけど。



静の隣に座りドキドキしながら様子を見ていると、静は顔をほころばせる。


< 132 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop