クールな弁護士の一途な熱情
「うん、やっぱり美味しい」
そのひと言に、ホッと胸をなでおろす。
よかった、美味しいって言ってもらえた。
「売ってるのも食べたことあるんだけど、どれも甘くてダメだったんだよね」
「あ……うん。静甘いの苦手って聞いてたから、あの時もなるべく甘くならないように作ったの」
「やっぱり。美味しさの秘訣は入江からの愛だよねぇ」
愛って……。またそうやってふざけたことを言う。
呆れたように笑って静を見ると、彼は心から嬉しそうに笑う。
あの頃と変わらない、その笑顔が好きだなぁ。
そう自然に思うと同時に、つられて私も笑ってしまう。
「1日早いけど、誕生日おめでとう」
12年ぶりに言えた言葉。
そのひと言に静はそっと微笑むと、フォークを一度置いてこちらへ手を伸ばす。
そして私の頬に手を添え、優しくひたいを合わせた。
「ありがと」
そう言って微笑む彼からは、チョコレートの香りがする。
不意に近づいた距離に、恥ずかしくてパッと距離をとった。
いきなりこの距離は反則……!
家にふたりきりだし、ドキドキしてきちゃったし、なにか他の話題を探そう!
考えて、そういえばと思い出す。
「そういえば、今日駅前のカフェに行ったんだけど、あそこ森くんがやってるお店なんだね」
「森?」
「うん。たまたま寄ったらいてさ、びっくりしちゃった」
なにげなく切り出した話題に、静の顔からは笑みが消える。