クールな弁護士の一途な熱情
「……ってことは、さっきまで森といたってこと?」
「え?うん、そうだけど」
そしてその顔は徐々に不機嫌なものへと変わる。
あれ、ついさっきまでニコニコしてたのに。どうしたんだろう。
そういえば、この前も森くんの話題になると機嫌悪くなってたかも。
もしかして、私が知らないだけで静と森くんって仲悪いのかな。
「静、あのさ」
「……嫌だなぁ」
「なにが?……わっ」
静は小さく呟いたかと思うと、突然私の肩を押す。
そして、フローリングに敷かれたラグマットの上、私の体を組み敷くように押し倒した。
「……入江があいつの名前呼ぶの、嫌だ」
天井の乳白色のライトに照らされた、逆光の中、静の声には苛立ちのようなものが含まれている。
あの静がこんなに苛立つなんて。やっぱり、相当仲悪いんだ。
「ご、ごめん!」
「え?」
「私、静と森くんが仲悪いなんて知らなくて……うっかり話題に出しちゃって」
無神経だったかも、と謝ると、静は少し固まり拍子抜けしたように脱力した。
「あー……そっか、そう受け取るか……」
「え?なにが?」
「なんでもない。いや、入江らしいというかなんというか……」
私を組み敷いたままうなだれる静は、まいったような苦笑いだ。
先ほどまでの苛立った様子はもうない。
機嫌直ったのかな?
静の不機嫌になるタイミングと、直るタイミングがわからない……。
不思議に思っているうちに、静は体を起こすと、私のこともそっと起き上がらせた。