クールな弁護士の一途な熱情
10.打上花火
8月7日、静の誕生日当日の朝。
今日もいつも通り身支度を済ませた私は、家を出て、事務所へと出社した。
昨日はあれから静とふたりでガトーショコラを食べて、話したりテレビを見たりとゆっくりと過ごした。
その穏やかな時間が心地よくてつい長居してしまったけれど、静は嫌な顔ひとつせず、帰りには車で送り届けてくれた。
……でも、なんで昨日いきなり抱きしめたりしたんだろう。
いきなり不機嫌になったり機嫌直ったり、抱きしめたり……静の考えがよくわからない。
でもとにかく、森くんの話題がダメだってことはわかった。
そんなに仲悪いイメージなかったんだけどなぁ。
そんなことを考えながら、事務室で仕事を始める準備をしていると、そこへ静が入ってきた。
「おはよ、入江」
「あ……おはよう」
昨日ふたりきりで過ごしたせいか、今更だけどなんか意識しちゃうな。
「昨日はありがと。帰り遅くなっちゃったけど、大丈夫だった?」
「うん。わざわざ送ってくれてありがとね」
静は小さく笑って私の頭をぽんと撫でた。その優しい手に、また胸がときめきを覚える。
その時、ガチャリと事務室のドアが開けられた。
「おはよー!」
元気よく現れた壇さんと、その後ろには花村さんもいる。
ふたりの姿に、静は自然と私から距離をとる。