クールな弁護士の一途な熱情
「伊勢崎くん誕生日おめでとう!ってことでこれプレゼント!」
壇さんがそう言ってデスクにドン!と置いたのはリボンがつけられた一升瓶。
『猛虎』と書かれたそれは、見るからに日本酒だ。
「私からはこれ」
続いて花村さんがデスクにドン!と置いたのは、リボンがつけられたボトル。
なにやらフランス語が書かれたこちらはどうやらワインのようだ。
朝から目の前に置かれた二本のお酒に、静は苦笑いを浮かべた。
「なんでふたりしてお酒……」
「いろいろ悩んだ結果よ。伊勢崎くんお酒弱いし、これで練習しなさい!」
なんて豪快な……。これを持って電車に乗ってきたかと思うとその姿がおかしくて、思わず「ふふ」と笑ってしまう。
すると壇さんはそんな私へ目を向けた。
「果穂はなにあげたの?」
「あ、えっと、お菓子を」
「お菓子?それだけ?」
『それだけ?』の言葉に思い出すのは、昨日静が口にした『もう一個』のプレゼント。
抱きしめられた腕の感触を思い出し、ボッと頬が熱くなる。
「は、はい!それだけ!それだけです!」
慌てて頷く私に不思議そうな顔をしながらも、壇さんは「そういえば」と思い出したように話題を変える。
「今週末私一切仕事入れないから、急な打ち合わせとかなしでお願いね」
「あ、私も」
それは今週末の予定について。
時には急遽相談や打ち合わせが入ることもあるため、それを受けてしまわないように私はきちんとメモをとる。