クールな弁護士の一途な熱情
「俺にもコーヒーちょうだい」
「あ、うん」
花火大会でのキスを思い出してしまったせいか、静の顔が直視できない。
静用の青いカップにコーヒーを注ぎ、彼に手渡す。
そしてすぐ顔を背けるように彼に背中を向けて、壇さんたちの分もコーヒーを注ぐ。
けれど静はそこから去る気配はなく、むしろこちらへ近づいた。
背後に立つ彼の気配に、背中から緊張する。
「入江、土曜日予定ある?」
「え?ないけど……」
「じゃあ、一緒に花火大会行こうよ」
まさか、この歳になってまた誘われるとは思わず、驚いてしまい振り向いた。
けれど『ダメ?』と追いかけるかのような静が見せる笑顔に、断れるはずもない。
「うん……いいけど」
「やった。じゃあ、18時に駅で」
小さく頷いた私に、静は嬉しそうに笑うと私の頭に小さくキスをして、コーヒー片手に部屋を出た。
静と、花火大会……。
もう一度行けるなんて夢にも思わなかった。
その誘いに特別な意味なんてないのかもしれない。
ふたりとも相手がいないから、ただそれだけなのかもしれない。
だけど、そうだとしても。嬉しさが隠せないのはどうしてだろう。