クールな弁護士の一途な熱情



それから木曜、金曜と仕事を終え、迎えた土曜日。

週末でさらにこの辺りで一番大きな花火大会ということもあり、海岸最寄りの小さな駅前は大勢の人でごった返している。

その中で、日が暮れはじめた18時、私はひとり改札前に立っていた。



浴衣姿の女の子たちの中、私の格好はというと、フレンチスリーブの白いカットソーに、ストライプ柄のワイドパンツだ。



浴衣も着ようかと思ったけど、クローゼットの奥にしまい込んだままだし、10代の頃に着ていたようなものだし。

それに、気合い入ってると思われるのも恥ずかしい。



恋人同士だったら、あれこれ考えずに浴衣着たり、かわいいと思ってもらえるような格好するんだけど。



チラッと見た周りには、浴衣姿で歩く高校生くらいの男女がいる。

仲睦まじく手を繋いで歩くその子たちに、懐かしさや羨ましい気持ちが込み上げる。

その時、ポン、と肩を叩かれた。



「あ、静……」



てっきり静だと思って振り向いた。

けれど、そこにいたのは見知らぬ男性。大学生くらいだろうか、私より結構年下だろう彼はこちらを見てニッと笑う。



「お姉さん、なにしてんの?ひとり?」

「……人と待ち合わせ、してるので」

「えー?ここで会ったのもなにかの縁だし、俺と花火見ようよ」



ナンパだ。いくら彼氏がいないとはいえ、そんなものになびくほどではない。

そう流すように無視をするけれど、彼は強引に肩を抱く。



「無視とか傷つくんだけど。ね、いいじゃん」

「ちょっと、離して……」



ベタベタと体を触られ、鳥肌が立つ。

さすがに声を荒らげようとすると、伸ばされた腕が私の肩を抱いていた手を捻り上げた。


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