クールな弁護士の一途な熱情
「花火始まるまでまだ時間あるし、出店見て時間潰そうか。なにか食べる?」
「たこ焼き食べたい。あ、でもお好み焼きも……」
「あはは、じゃあふたりで分けて食べよう」
手を繋いで歩いて、ふたりでひとつのものを分けて食べて、こうしているとまるでデートみたい。なんて、錯覚してしまう。
しばらくそうして静と食べ歩いていると、不意に浴衣姿の女性が目に入る。
同時にこちらを見た姿と目が合い、見るとそれは花村さんだった。
「あら、伊勢崎先生……と、果穂ちゃん?」
「は、花村さん!」
薄紫色の浴衣がよく似合っている花村さんは、私と静の顔とつながれた手を見てなにかを察したように笑う。
「あ、いや、これは……」
「ふふ、今は深く聞かないであげる。あ、この奥の焼きそば屋さんに都子いるから、冷やかされたくなかったら行かない方がいいわよ」
花村さんはそう笑うと、すぐ子供に呼ばれて行ってしまう。
たしかに、壇さんに見られようものなら、『なんで!?付き合ってるの!?』と問い詰められ冷やかされそうなのが想像つく。
それは静も同じことを考えたらしく、花村さんが指していた方向とは逆に歩き出した。
「やっぱり地元だし、知ってる人と会っちゃうよね」
苦笑いをする静に、私もうなずく。
「前に一緒に来たときも、知り合いと会うたびに手離してたよね」
思い出すのは、あの日の記憶。
大した会話もないまま、ふたり手を繋いで歩いた。
その手は、友達や近所の人を見かけるたびに離されて。けれどまた、自然とつながれた。