クールな弁護士の一途な熱情
「懐かしいなぁ。あのとき確か、向こうの海沿いで花火見て……」
海岸沿いで花火を見て、キスをした。
それを思い出し、自ら言いかけたことに頬がぼっと熱くなる。
私のその反応に静も同じことを思い出したようで、同じく頬を染めて顔を背けた。
わ、私のバカ!わざわざあんなことを話題に出そうとするなんて!
気まずい、なにか他の話題を……!
焦って周りを見回すと、不意にテントの下にいる森くんが目に入る。
きっと出店としてきているのだろう、黒いエプロンをした彼にすがるように話題を変えようとする。
「あっ、あんなところに森くんが!森く……」
そしてその名前を呼ぼうとした、けれどそれは突然腕を引っ張り歩き出した静によって遮られた。
「わっ、静?」
いきなりどうしたの、と必死についていきながら思うけれど、静は無言のままズンズンと歩いていく。
はっ、そういえば静、森くんと仲悪いんだった!
ふと思い出し、先ほど自分がまた無神経に森くんの話題を出してしまったことに気づいた。
「ご、ごめん!」
慌てて謝ると、静は足を止め不思議そうに振り向く。
「なにが?」
「静、森くんと仲悪いのに私また……」
申し訳なさから声が小さくなる私に、静は困ったように頬をかく。
「あー……違う、仲悪いとか嫌いとかじゃなくて」
「え?違うの?」
それじゃあ、どうして?
疑問に思い首をかしげると、静は少し黙って、言いたくなさそうに、けれど観念したように口を開いた。