クールな弁護士の一途な熱情
「ここは?」
「花火がよく見えて、さらに人も少ない穴場スポットなんだって。この前仕事関係の人から聞いたんだ」
穴場スポット……。
たしかに、海岸沿いから少し外れているし、場所もわかりにくい公園だ。
ここなら人もあまり集まらないだろう。
静はボディバッグの中から小さく包まれたレジャーシートを取り出し、芝生の上に敷く。
ふたりが横になれるくらい、充分な大きさのあるレジャーシートの上、腰を下ろす彼に続いて私も腰を下ろした。
見上げると、いくつかの星が輝く夜空が広がっている。
「きれい、プラネタリウムみたい」
「海岸沿いで花火見るのもいいけど、こうして静かなところで見られるのも贅沢だね」
少し遠く、にぎわう声やお囃子の音が聞こえる。
それに耳を傾けながら、視線を空から隣の静へと向けた。
空を見上げるその横顔は、私の視線に気づいたようにこちらを見る。
しっかりと交わる視線に、つい目をそらした。
「……入江」
そして彼が私の名前を小さく呼んだ、その時。
ふたりの頭上に、ドン、と大きな花火が上がった。
体の奥に響く大きな音と、空を覆うほどに広がる花火。それらにふたりそろって視線を一気に奪われる。
「わ……綺麗」
「うん、すごいね」
次々と打ち上がる花火の迫力に圧倒されながら、再び静を見ると、その顔もこちらを向いた。
薄暗い公園で、互いの顔がよく見えるほどに花火のあかりが照らす。
その眩しさに、あの日の景色が重なった。