クールな弁護士の一途な熱情
11.過去
花火の打ち上がる夜空の下、重ねられた唇は熱を帯びた。
このままずっと、時が止まればいい。
そう願ったのなんて、どれくらいぶりだろう。
花火大会から2日が経った月曜日の朝。
通勤ラッシュで混雑する電車の中、暑そうだったり気怠げなサラリーマンやOLに囲まれた私は、ひとり緊張していた。
あの日、あのままキスを重ね抱きしめ合った私たちは、花火大会の終わりとともにようやく我に返った。
少し人が引いてから、タクシーを拾って帰路に着く間、お互い顔を見れなくて静がどんな顔をしていたのかはわからない。
だけど、その間もずっと手はつないだまま離されることはなかった。
家に着き、離れてしまった体温を名残惜しく思うほど、しっかりと力を込めて。
『好きだよ』って……聞き間違いじゃないよね。夢じゃないよね。
同級生とか、友達とか、そういう意味じゃなくて。
恋愛対象として好き、ということだよね?
電車に揺られながら静の言葉を思い出すと、カーッと顔が熱くなる。
それを夏の暑さのせいのように装いながら、手で顔をあおいだ。