クールな弁護士の一途な熱情
「今日伊勢崎先生も壇さんも一日外出なんですね」
「えぇ、だから今日は私たちふたりだけ。のんびり仕事片付けましょ」
にこ、と微笑む花村さんに私も笑って頷く。
そして仕事を始めようとデスクに着こうとした……ところが。
「その前に」
花村さんはそのひと言とともに、右手で私の肩をぎゅっと抱く。
「この前の件、じっくり聞かせてもらいたいわ」
この前の件……というのは、花火大会の時のことだろう。
にっこりとした笑顔、だけれど肩を抱くその手は逃さないとでもいうかのように力強い。
やっぱり忘れてなかった……。
有無を言わさぬその圧に、私はひきつった笑みで「は……はい」と頷いた。
それから、花村さんが淹れてくれた紅茶を飲みながら、私たちはデスクに着く。
すっきりとしたダージリンティーの香りが室内にふんわりと香った。
「それで、ふたりはいつの間にそんな関係に?」
紅茶をひと口飲んでたずねる花村さんに、答えに迷ってしまう。
「いえ、『そんな関係』というほどのものでもなくて……」
「へぇ。ただの同級生ってだけで手つないでお祭りデートなんてするかしら?」
そう言われると、確かに……『ただの同級生』で通すのは苦しいかもしれない。
誤魔化しも言い訳もきかないと判断し、観念したように話す。