クールな弁護士の一途な熱情
「……実は、高校の頃のほんの少しだけ付き合ってたんです」
私が勇気を出してぼそ、と呟いた言葉は、花村さんにとっては予想通りだったのだろう。彼女は驚く様子もない。
「でもそれ以来12年間会ってもないし、私も彼氏がいた時もあるし、静にも恋人がいたこともあると思うし……お互いに思い出になってて」
懐かしい、初恋の思い出。
それだけだった、はずなのに。
「それが再会して、再燃したってことかしら」
心を見透かすように言い当てられ、なにも言えなくなる私に、花村さんはふふと笑う。
「まぁ、今だからこそできる恋もあるわよね。あの頃見えなかったものが見えたり、素直になれなかったのが今は言えたりして」
今だからこそ、できる恋……。
確かにそうかもしれない。
あの頃は緊張とぎこちなさしかなかったふたりが、今では自然と手をつなげているように。
時が経ち、今のふたりだからできることがある。
「あの頃終わってしまった恋も、今なら続くこともあるから。過去に惑わされないで、今の自分の気持ちを大事にできたらいいわね」
今の自分の気持ちを……か。
花村さんの柔らかな声に、背中を押されるような感覚を覚えながら、カップに口をつけた。
……だけど、不意に心にちらつく姿。
それは、以前の森くんとの会話から思い出した存在だ。
“彼女”の存在が、今だこの心を縛る。