クールな弁護士の一途な熱情
「だけどそれなら尚更、ここ辞めちゃうのは残念ね。いつから向こうに復帰するんだっけ」
「9月からです。なのでここは今月末までで」
「じゃあ明日からはお盆休みだし、あとちょっとしか一緒に過ごせないわね。お盆明けはみんな忙しくて外出ばかりだし……」
そっか、ここで静や花村さんたちと過ごせるのもあと少し。
みんなが忙しい時期となれば、尚更会える日も少ないだろう。
たった一ヶ月ほどしかまだ働いていないけれど、楽しかったし、やめてしまうのがちょっと名残惜しいくらいだ。
静はまたいつでも会えるって言ってくれてたけど……そもそもお互い連絡先も交換してないから、それをしなくてはこのまま終わってしまう。
……勇気を出して、聞いてみようかな。
このままなかったことにするのは、いやだ。
私も、この再会を無駄にしたくはないから。
その日の夕方。仕事を終えた私は、今日も定時で事務所を出た。
今日は結局静も壇さんも戻ることはなく、花村さんも午後に出かけて直帰するとのことで、半日近くひとりだった。
この先のスケジュール見ても、8月後半はみんな予定びっしりで忙しそうだったし、こんな日がしばらく続きそうだ。
そんなことを考えながらエントランスを抜けて、建物から出た。
すると、ちょうど向かいから歩いてきた静と目が合う。
「わっ、静……」
突然のその姿に、ドキッと心臓が跳ねた。
キスのことを思い出すと、緊張してしまう。けど普通に、普通に……!