クールな弁護士の一途な熱情
「この前しーちゃんお誕生日だったでしょ?プレゼント持って来たからお祝いしようよ。今日おうち言っていい?」
静はその腕を解こうとするけれど、彼女はしっかりと腕を絡めて離す様子はない。
「希美。前から言ってるけど家には……」
「あ、そうだ。この前ピアスも忘れちゃったんだけど、これ見覚えない?」
そしてそう言いながら彼女が見せたのは、右耳だけにつけられたゴールドのピアス。
ハートのモチーフがついたそのピアスは、以前静の家で見つけたものと同じものだ。
すっかり忘れてしまっていたけど……あの子のものだったんだ。
つまりあの子は、度々静の家に通っている。
そう思うと胸がズキッと痛んだ。
その痛みをこらえていると、彼女の目はこちらに向けられる。
最初は私が誰かわからない様子だったけれど、徐々に思い出したように驚きを見せた。
「え……ねぇしーちゃん、なんでこの人がここにいるの?なんでっ……」
静を問い詰める彼女に、私はどんな顔でいればいいかがわからず、逃げるようにその場を歩き出す。
「入江!待っ……」
「あっ、伊勢崎先生!すみませんいきなり相談入れてもらっちゃって」
静はそれを追いかけようとしたようだけれど、そこにちょうど現れた依頼人に捕まってしまったようだった。
その隙に私はさらに彼から距離を取るように足を早めた。
……最悪だ。
このタイミングで、存在を思い出すなんて。
静が『希美』と呼んでいた彼女は、静の幼馴染。
私たちよりひとつ年下で、静のことが大好きで、いつも『しーちゃん』って呼んで静の隣を守っていた。
かわいらしくて、甘い声をしていて、そして……私たちが別れた理由の大きな部分を占めている。