クールな弁護士の一途な熱情
『昨日しーちゃん、一日中希美のそばにいてくれたんです』
『え……?』
『希美が、具合悪い、気持ち悪い、ママもいなくて心細いからそばにいてって泣いたら本当に夜まで一緒にいてくれた』
その口から発せられたのは、昨日待ち合わせに現れなかった理由。
私が心配と不安を抱きながら、雨の中待っていた間、彼は希美ちゃんといた。
その事実が、ショックだった。
『所詮、入江さんの存在ってそんなものですよ。希美にはしーちゃんしかいないし、しーちゃんにも希美しかいない。希美たちが過ごした時間はあなたには超えられない』
初めて、人から向けられた強い敵意に私はなにも言い返せなかった。
言い返す言葉も、自分の中に見つけられなかった。
彼の特別はあの子。
だって、あんなに楽しみだったデートよりも彼女を優先するくらい。
連絡のひとつもできないくらい。
彼の中での私の順位なんて、そんなもの。
その事実に、悔しいとか悲しいとか嫉妬心とか、様々な気持ちが心に巡った。
どんなに好きでも、彼の中の一番があの子なのだとしたら。
あの子がそばにいてあげればいい。
そんな劣等感に押しつぶされそうになる心を守るように、私はその日、『昨日はごめん』と謝る静に別れを告げた。