クールな弁護士の一途な熱情
『……友達に、戻ろう』
『それは、昨日の俺のせい?』
『ううん、違うよ。そもそも静には希美ちゃんがいるでしょ。……お似合いだよ』
泣きたいのをこらえて、笑って言った言葉に彼は顔を歪め傷ついた表情を見せた。
その表情に胸が強く痛んだけれど、それでも希美ちゃんの言葉の方が強く、逃げるようにその場をあとにした。
それ以来、部活という接点もなくなった私たちは顔を合わせることすらなかった。
時々彼を見かけるたび意識した。
けどその度彼の隣にはあの子がいて、胸を苦しくさせるだけだった。
……そっか、今でもまだ彼女は静のそばにいたんだ。
あれからの12年間、希美ちゃんは私が知らない間の静のことも知っている。
その時間が、大きく重い。
ピアスは、あの子のだったんだ。
なによ、ちゃっかり家に連れ込んでるんじゃないの。
自分に強い好意を向けてくれるかわいい子と同じ家にいて、なにもないわけがない。
なにが、あの夏を忘れたことなかった、よ。
そんなの嘘なんじゃないの。
花火だって、あの子と何度も見てるんじゃないの。
……そんなことを思って、彼の言葉やキスより、あの子のたったひと言に揺れる自分の弱さが憎い。
こんな私に、今更あの夏の続きを望む資格はない。
12年前、彼女の言葉に逃げたのは私。
あの時逃げなければ、私と静の関係は続いていたのかな。
もっと彼を知ることができて、希美ちゃんと静の時間を超えることができたのかな。
……ううん、変わらなかったかも。
彼の心に、彼女が特別として在る限り。
こうしてまた、胸の中が劣等感にさいなまれる。