クールな弁護士の一途な熱情
その日は、うまく眠れなかった。
考えたくないのに目を閉じると静の顔と希美ちゃんの言葉が浮かんできて、胸が締め付けられた。
そんなことを何日も繰り返し、お盆休みを過ごした。
そして迎えた、連休明けの月曜日。
私はいつもより少し早く家を出て事務所へと向かった。
眠れなかったから落ち着かなくて家出てきちゃった。
仕事していれば気持ちも紛れるだろうし……事務所内全部掃除して、事務仕事片付けちゃおう。
静は今日も外出の予定だ。顔を合わせなくていいのは、正直助かる。
なにを話していいかも、わからないし。
エレベーターに乗って5階で降りる。そして事務所へ入った、その時。
「入江」
事務室手前の通路で、静が待っていた。
「なんで……今日朝から外出じゃなかったの」
「話したいことがあったから。……この前の、希美のこと」
この前のこと。その言葉にドキリと胸が嫌な音を立てる。
けれど、彼の口から現実を突きつけられたくなくて、私は言葉を遮るように口を開いた。
「わざわざ追いかけて牽制されたよ。あなたがいない間彼を支えてきたのは私、って」
胸に込み上げる苦しさを堪え、あははと笑う。
「心配する必要なんてないのにね。私と静はただの同級生ってだけだし、今更どうこうなるわけもないのに」
「入江、俺の話聞いて」
「なんの話?あの子との話?」
強がりが、きつい言葉になって口から出る。