クールな弁護士の一途な熱情
それから静はすぐ外出していき、顔を合わせることはなかった。
沈む気持ちを誤魔化すように一日働き、仕事を終えた私はその足で夜の街を歩いていた。
家に帰る気にはなれなくて、人でにぎわう夜の横浜の駅前通りを歩いていく。
その間も頭の中には静の姿が浮かぶ。
「……穂、果穂!」
その思考を打ち消すように、突然肩を掴まれた。
はっとして振り向くと、そこには拗ねた顔の森くんがいた。
「森くん!どうして……」
「仕事終わって帰ろうとしたら果穂が見えたから。声かけてるのに全然気づかないなんてひどいやつ」
「ご、ごめん……」
そうだったんだ、全く気づかなかった。
申し訳なく言うと、それより、と彼は私の顔を覗き込む。
「どうした?ぼんやりして」
「ちょっと、いろいろあって」
いくら同級生とはいえ、静とのことだし、あまり人に話すようなことでもないよね。
そう思い笑って誤魔化そうとした。けれど森くんは少し考えてから、突然私の腕をぐいっと引っ張り歩きだした。
「よし、じゃあこれから飯行こう」
「へ?」
ご、ごはん?
いきなりなぜ?
意味がわからず、戸惑いながらもついていくと、森くんはこちらを見てふっと笑う。