クールな弁護士の一途な熱情
「言っただろ。なんでも話せって」
その言葉に思い出すのは、以前森くんのお店に行った時、彼がかけてくれた言葉。
私が気落ちしてるのをわかって、気遣ってくれたのかな。
だとしたら、ここはその優しさに甘えよう。
「……ありがとう」
小さく笑って頷くと、森くんも眼鏡の奥の黒い瞳をそっと細めた。
それから、彼に連れられやってきたのは近くのスペインバルだった。
オープンキッチンと対面したカウンター席と、4人がけの席がいくつかあり、木材を主に使用した内装や黄色い間接照明が本場を連想させる造りをしている。
けれどどちらかというと食事がメインのカジュアルバルのようで、店内はほどよい人でにぎわっていた。
その中の一番端の席で向かい合って座った私たち。
その間のテーブルの上には、ピザや肉料理、サラダなど数多くの料理が並べられた。
「今日は俺の奢りだ。遠慮なく食え」
「い、いやそう言われても……さすがにふたり分にしては多い気が」
「そうか?果穂は女子の割には食うイメージだったけど」
それは高校生の頃の話……!さすがにこの歳であの頃と同じ量は食べないよ!
そう思いながらも、とりあえず目の前のイベリコ豚をフォークに刺してひと口食べる。
甘辛いソースの味とじゅわっとした肉の旨みが口の中に広がった。