クールな弁護士の一途な熱情



「じゃあ、逃げちゃえば」

「え……?」



ところが、そこで森くんが発した言葉は予想外のものだった。



「傷つきたくないって気持ち、人間なら誰でもあるだろ。そんな時は逃げてもいいと思う」



逃げたいなら、逃げてもいい?

でも、逃げ方すらもわからない。

そう弱音ばかりが出てくる私に、彼は胸のうちを見透かすように言う。



「逃げ方がわからないなら、俺を逃げ道にしろよ」

「逃げ道に……?」



その意味を問うように見つめると、彼は真剣な顔で言う。



「愚痴りたいなら聞くし、落ち込んでるなら笑わせてやる。寂しいなら胸貸すよ」

「なんで、そこまで……」

「そりゃあ、果穂のことが好きだから」



私の、ことが?



「えっ……えぇ!?」

「その反応ってことは、全く気付いてなかったんだな」



思わぬ彼のひと言に驚き大きな声を出す私に、森くんはおかしそうに笑った。



も、森くんが私のことを……!?

なんで?いつから?

戸惑いを隠せずにいると、その手はテーブルの上で私の手をそっと握る。



「高校の頃、好きだったけど言えないまま卒業して後悔した。だから今、再会してこうして話聞いて正直チャンスだと思ってる」



手を包む大きな手は、緊張で少し汗ばんでいる。

いつもクールな彼にも、こんな一面があったのだと知る。


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