クールな弁護士の一途な熱情
森くんに連れられるがまま、駅までの道を歩いていく。
今この肩に触れるのは森くんの手なのに。
体に残るのは、腕を掴んだ静の手の力強さだけ。
だけど、彼はそれ以上引き留めてくれることはない。
……ほんの少しの期待すらも、もうない。
希美ちゃんが言っていた通り、所詮その程度の存在だ。
特別なんかじゃない。
あの熱は、過去を思い出した一過性のものにすぎない。
しばらく歩いて来たところで、森くんは口を開く。
「……もういいよ」
「え?」
「泣いてもいい。よく頑張ったな」
それは、私の心を見透かすかのようなひと言だった。
森くんは、私の心をわかったうえであそこで静から引き離したんだと思う。
どうしたって、この心は彼に惹かれてしまうから。
希美ちゃんの言葉が痛いのも、彼の特別になりたいのも、同じ苦しさを繰り返したくないのも。
全ては、静のことが好きだから。
あの頃と変わらない、ううん、あの頃以上の熱量で。彼を愛しく思うから。
心の中でその気持ちを認めると、涙がポロポロとこぼれた。
好き、だから。
だからこそ。
特別になれないのなら、背中を向けて逃げてしまおう。
さよなら。
彼に恋した、二度目の夏。