クールな弁護士の一途な熱情
それから私と森くんは近くのレストランで食事を済ませ、再び品川駅で別れた。
「送って行かなくて大丈夫か?」
「大丈夫。森くんの方が家遠いんだし、気にしないで」
私の家は新宿方面だけど、森くんの家は横浜方面だ。わざわざ送らせるわけにはいかない。
そう思い軽く断ると、手を振り彼と別れた。
……森くん、いい人だな。
気持ちに答えも出せない。本当に逃げ道にしてしまっている最低な私にも、こうしてわざわざ会いにきて笑顔をくれる。
もう、いっそのこと彼の気持ちに頷いてしまったほうが楽になれるのかもしれない。
花火大会の記憶も、キスも、手の感触も、全て彼で上書きして、静の記憶を過去のものにしてしまえたら。
きっともう、こんなに胸は痛まない。
「あら、果穂ちゃん?」
その時、不意に呼ばれた名前に振り向くと、そこには花村さんがいた。
ベージュのトレンチコートを着た彼女は笑って手を振りこちらへ駆け寄った。
「花村さん!どうしたんですか?」
「今日はこっちで友達と会っててね。果穂ちゃんは……デートの帰りかしら」
先ほどの森くんとの姿を見ていたのだろう。
ふふ、と笑ってたずねた彼女に、私は苦笑いをこぼした。