クールな弁護士の一途な熱情
「まだ、彼氏とかではないんですけど」
「そうなの。ということは、伊勢崎先生とはなにもなくなっちゃったみたいね」
「……そう、ですね。やっぱり一回終わった恋はその時点で終わってたんですよ」
沈みそうになる気持ちを堪えて、笑顔をつくる。
「今度、彼と花火大会行くんです」
「花火大会……って、藤沢の?」
この時期の花火大会といえば、とすぐ思いついたのだろう。
花村さんにうなずいて私は言葉を続けた。
「逃げ道にしていいって、そう言ってくれて。だから、私も次の恋に踏み出そうかなって」
花村さんはなにかを思うように少し黙ってから、口を開いた。
「……伊勢崎先生が前に酔った勢いで話してくれたことがあるんだけどね。高校生の頃好きだった人がいたんだって」
「え?」
いきなり、なんの話?
あまりに唐突に感じられたその話題に意味がわからない。けれど花村さんは笑顔のまま話を続けた。
「その人はよく笑う人で、部活も全力で見ていて気持ちのいい人で、気づいたら好きになってたって」
よく笑う人、部活も全力……その言葉に、彼が以前部活中の話を覚えていてくれたのを思い出した。
「その人とは付き合えたけど、自分が中途半端に他の人に優しくしたせいでフラれて。その時に引き留められなかったのを、今でも後悔してるって言ってたわ」
……待って。
それってつまり……私との、こと?
「『何年経っても誰と付き合っても、夏になると彼女を思い出す』『彼女以上の人はいないと気付いて結局別れちゃう』って」