クールな弁護士の一途な熱情
こうして花村さんから聞くことで、初めて知る彼の本当の気持ち。
彼は後悔を残して、夏になると私を思い出してくれて。
『あの夏を忘れたことなんてなかった』
こうしてようやく、彼のあの言葉が本物だったんだと知る。
大きく揺れるこの胸の内を読むように、花村さんは優しい声で言う。
「……私ね、伝えられなかった想いはいつまでも消化されることなく残るだけだと思うの。それって、美しいけどつらいわよね」
伝えられなかった『好き』の気持ちは、消えない。
嫌いにもなれず、時間とともになんとなく諦めるしかできない。
いつか誰かと結婚して、家庭を持っても、きっと思い出しては後悔して、終わることのない恋を続けるのだろう。
「花火、楽しんできてね。また今度ゆっくりご飯でも行きましょ」
そして、細い指で私の肩を軽く叩いて、先ほど森くんが歩いていった方向へ歩いていった。
……知らなかった。
今でも静は、そんなふうに思ってくれていた。
なのに私は彼の言葉を信じられず、他人の言葉ですぐに揺れて、ぶれて。
そんな自分が情けなく恥ずかしい。
勇気を出して向き合えたら。
強い気持ちで、彼のことを信じられたら。
あの頃も今も、変わっていたのに。
自分への悔しさに、涙が溢れて視界を歪めた。
……このままじゃ、ダメだ。
逃げ道なんて作っちゃいけない。
甘えることも、誰にとっても正しくない。
優しさや温かさをくれた彼のことを、信じて向き合おう。
そのためにはまず、森くんの気持ちに答えなくちゃ。
中途半端なままじゃいけない。
きちんと、伝えよう。