クールな弁護士の一途な熱情
それから数日が経ち、迎えた土曜日の夜。
花火大会当日、駅前で待ち合わせた私と森くんは出店を見るのもそこそこに、花火がよく見える湘南海岸沿いへと向かい歩いていた。
花火大会の始まりを待つ人でごったがえした道を、私たちは並んで歩く。
「どこ見てもすごい人だね」
「あぁ。全国で3位以内に入るくらい人気の花火大会らしいからな」
「そうなの?来たことなかったなぁ」
答える森くんの横顔を見上げて、視線を前へと移した。
……本当は、今日来るのも迷った。
変に期待させたりせず、すぐ断るべきなんじゃないか。そうも思ったけれど、やっぱり気持ちは直接伝えるべきだと思ったから。
少し黙った私に、森くんは自然に私の手を取る。
その骨ばった手は冷たく、静と違うものだと感じた。
こうしてつなぐ手ひとつにも、思い出すのは静のこと。
しばらく歩いて、海沿いの石段に腰掛けることにした。
そしてふたり花火が打ち上がる時刻を待つ。
私の緊張感が彼にも伝わってしまっているのか、いつもほど会話は弾まず、空気はぎこちない。
……ちゃんと、言わなくちゃ。
森くんに対して、自分の気持ちを。
「……あのさ」
「高校の頃の話なんだけど」
意を決して切り出した話は、森くんの言葉によって遮られた。
高校の頃の話って……いきなりなにを?
その言葉の続きを待つと、森くんは海辺を見たまま話を続けた。