クールな弁護士の一途な熱情
「あの頃俺一部の女子に悪口言われててさ。告白断ったら、偉そうとか遊びまくってるとかあることないこと言いふらされてたんだよな」
「あー……そんなこともあったね」
森くんの話から思い出すのは、高校2年の時、女子の間で彼の悪い噂が回っていたこと。
森くんが告白をされ断った女子が泣いて、それを可哀想に思った周りの子たちがあることないことを吹聴していたのだ。
そんな事情を知っていた私や映美たちは信じなかったけれど、知らない人たちはそれを信じてしまい、あっという間に彼の悪い評判は回ってしまった。
「けど一回、果穂がそれを庇ってくれたのをたまたま聞いてさ。かっこよかったな、あの時の果穂」
……そうだ。
一度だけ、その噂をはっきりと否定したことがある。
『森うざいよねー。ちょっとモテるからって調子に乗ってるよ。女遊びもひどいっていうし』
『果穂も仲良くするのやめときなよ』
『……そうかな。森くんいい人だし、私は森くんと話してると楽しいよ』
同調する女子の中でひとり、それを否定するのは少し勇気がいった。
けど、いつも話を聞いてくれて、いい人だった森くんがそんな人だと思われてしまうのは我慢の限界で。
勇気を出して言った私に映美たちも賛同してくれて、気づけば彼の悪い噂は消えていたのだった。
そんなあの頃のことを思い出しながら、私はふふと笑う。