クールな弁護士の一途な熱情

「恥ずかしいな。よく覚えてるね」

「覚えてるよ。俺にも味方がいてくれるんだって嬉しかったし、それが果穂のこと好きになったきっかけ」



そう言って、握る手に力が込められた。



「なにも言えないまま卒業して後悔して、それなりに恋愛もしたけど……果穂と再会して、やっぱり果穂の笑顔が好きだなって思った」



勇気を絞り出すように手に込められる力を感じながら彼を見ると、その目はまっすぐこちらを見る。



「好きだ、果穂。だから、果穂のこと泣かせる奴にはやれない」



『好きだ』、そう言ってくれる彼の眼差しはまっすぐで、私だけを見てくれている。



きっと彼となら、幼馴染に不安になったり劣等感を覚えることもないだろう。

泣くことも、ないのかもしれない。



……だけど、そうだとしても。



「……ごめん、なさい」



ざわめく人混みの中、ぽつりと呟いた言葉だけが、静かに響く。



「私、本当に最低で……好きな人の言葉も信じられないで、森くんの気持ちも利用して、逃げて」



そんなに一心に気持ちを向けてくれていた彼に対して、逃げ道だなんて言うのは最低だ。

誰の気持ちにも向き合わず、逃げて、甘えて、そんな自分がいやになる。



だからこそ、今、ここではっきりと伝えるんだ。



「だけど、やっぱり私……」



言葉がうまく出てこない。代わりにこみ上げた涙が、視界を滲ませ歪めた。

けれどそんな私に、森くんはぽん、と軽く頭を撫でた。