クールな弁護士の一途な熱情
「……わかってた」
「え……?」
「泣かないでほしいとか、逃げてもいいとか、それは俺の気持ち。だけど果穂はあいつがよくて、逃げたくないんだろ」
彼の優しい声が、この胸の本音を突く。
静を想うと、嬉しくて切なくて、苦しさから逃れようとするほど愛しさが絡みつく。
一度は終わらせた恋。
だけど再び会って、彼のぬくもりに触れて、あの恋が終わってなどいなかったと気づいた。
優しくされたからとか、初恋に浸ってるだけじゃない。
今この心の中に彼がいる。
好きなんだ。
静のことが、好き。
「入江!!」
その瞬間、突然後ろから肩をぐいっと引っ張られた。
目元を涙で濡らしたまま驚き見ると、そこには静がいた。
え……静……?
「し、ずか……?なんで……」
「花村さんから、入江が男と花火大会行くって聞いて……探し回って、やっと見つけた」
そう言いながら肩で息をする彼は、ネクタイのよれたスーツ姿で、髪も乱れ顔も汗だくだ。
そんな、汗だくになって探し回ってくれたの?
私のために、この無数の人々の中を。
肩を掴む手から彼の熱を感じると、涙がいっそう溢れ出す。
静は息を整えながら、視線を森くんへと向ける。
「森。悪いけど、入江は渡せない」
落ち着いた声で言った静に、森くんも冷静に返す。