クールな弁護士の一途な熱情
「よその女との決着はついたのか?」
「……ついたよ。何年も甘やかしてきたけど、ちゃんと言った。俺は、入江のことしか見えないって」
私の、ことしか……?
静がはっきりと言い切った言葉に、森くんは「そうか」と笑う。
「じゃあ、もう大丈夫だな」
そして私の背中をトンッと押してくれた。
向き合えよ、そう背中を押すように。
すると静は私の腕を引っ張り歩き出す。それに連れられるがまま、私もその場を歩き出した。
来て、くれた。
走り回って、見つけてくれた。その思いが嬉しい。
静に腕を引かれたまま、海岸沿いを歩いて行く。
そして人混みを抜け、端の方までくると静は足を止めた。
「……悔しかった」
「え……?」
少し遠いにぎわいを聞きながら、彼の声がぽつりと響く。
「希美の言葉を上回れないこと、引き留められなかったこと、森から奪えなかったこと。全部悔しくて、いっそなくせたらって思って……だけど花村さんから入江が今日花火大会に行くって聞いて、いてもたってもいられなかった」
背中を向けたまま言うと、静はこちらを向いて勢いよく頭を下げた。
「希美とのこと、誤解させてごめん。何年も前から希美の気持ちは知ってたけど、妹みたいな存在で、恋愛対象には見られないって断ってて」
そして顔を上げた彼の表情は、真剣さの中、切なく目を細める。