クールな弁護士の一途な熱情



「……別に、しーちゃんのストーカーとかじゃないですから。ただ職場がこの駅の近くってだけです」

「べ、別になにも言ってないけど……」

「目が言ってたもん!『なんでここに希美がいるの』って目してた!」



会って想像言いがかりをつけられる。けれど、これまでのような痛いほどの敵意は感じ取れなかった。

すると希美ちゃんは、シワのついた私のシャツを見てなにかを察したように言う。



「あなたがここにいるってことは、しーちゃんの家から朝帰りってところですか。よかったですね、12年越しに恋が実って」



嫌味のように刺々しく言う彼女に、なんて答えていいか分からず笑顔がひきつる。

けれど彼女はさらにツンツンと刺すように言葉を続けた。



「まぁもともと、希美がいなければ上手くいってたんですもんね。すみませんねー、散々邪魔して。嫌な女で」

「そんな。嫌な女とか、思ってないよ」

「嘘つかないでくださいよ。希美だったらそう思うもん」



確かに、敵意を向けられるのは嫌だし、あんなことを言われていい気分ではない。

……けど、静との関係がこじれたのが希美ちゃんひとりのせいだとも思わない。



「あの頃もこの前も、希美ちゃんの言葉に揺れたのは確かだけど、そもそもは静を信じられなかった自分が悪いから。それは、希美ちゃんのせいじゃない」



あの時私が静とちゃんと向き合えていたら、話に耳を傾けていたら。

それは、自分の気持ちひとつで変わっていたはずだから。


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