クールな弁護士の一途な熱情
「でも、もうなにを言われても揺らがないから。あなたと静がどれほど長い時間を重ねてきたとしても、私はそれを上回ってみせるから」
真っ直ぐに希美ちゃんを見つめて言い切った私に、彼女は少し驚く。
けれどすぐに、ふっと鼻で笑ってみせた。
「あなたにそんなふうに言われなくても、こっちはとっくに諦めてますけど」
「えっ」
「そりゃあそうでしょ。しーちゃんが、わざわざうちにたずねてきて頭下げるんだもん」
静が、頭を下げて……?
希美ちゃんには話をした、とは聞いていたけれど、どんなふうになど細かいことは聞いていなかったから驚いてしまう。
「『これまで甘やかしてごめん。期待させたならちゃんと謝る』、『希美のことは幼馴染としてしか見てない。好きなのは果穂だけなんだ』って」
私だけ、そう言ってくれたことが嬉しく思うと同時に、彼女に対してただ突き放すのではなく謝るところが静らしいと思った。
そんな彼の姿を思い出しているのか、希美ちゃんはそれまで強気だった目を悲しげに細めて笑う。
「……本当は、ずっとわかってた。希美がそばにいても、しーちゃんはずっと遠いところを見てたから」
それは、幼い頃からあの頃も、そしてこの歳になっても。
隣にいた彼女だからこそ見えた表情。
「入江さんと別れてから余計距離が離れた。手もつないでくれないし、自転車の後ろには乗せてくれない。毎年どんなに誘っても一緒に花火大会にも行ってくれない」
人がまばらに行き交う駅の入り口で、言いながら彼女は俯く。
その声は震えていて、涙を必死で堪えているのだろうことが伝わってきた。